今月の論語 (2025年9月)
遠慮近憂(えんりょきんゆう)

子(し)曰(のたま)わく、人にして
遠き慮(おもんばかり)無ければ、
必ず近き憂(うれい)有り。

子曰、人無遠慮、必有近憂。
(衛霊公第十五、仮名論語二三三頁)


〔注釈〕先師が言われた。「目先のことに捉われず、先の先まで思いをめぐらさなければ、必ず身近なところに思いがけない心配事が起こるものだ」

〔和歌〕子はのらす 遠(とほ)き慮(おもんばかり) なきをり 近き憂の つねに來たると    (見尾勝馬)

会長 目黒泰禪

 昨年九月から今年八月までの間、会員の皆様に「一般寄附金」をお願い申し上げて参りましたところ、二〇一名の方々からご寄附を賜りました。まことに有難く心より厚く御礼を申し上げます。ご寄附戴きましたご仁援をもとに、次の世代への普及活動に活用させて頂きます。
 
 今年は異常な暑さとなった。30度以上の真夏日、35度以上の猛暑日の日数は年ごとに記録更新している。が、涼しくなる秋にはすっかり忘れ、来年もまた「今年は異常な暑さだねぇ」と言うのであろう。どうやら人間は、悪化する環境条件に順応する柔軟さがあるらしい。ゆっくりと進行する変化や危機に気づかない、いわゆる「ゆでガエル」理論通りの生き物らしい。孔子は「遠い未来や広く社会をみて思慮(遠慮)しなければ、必ず身近なところに心配事(近憂)が起こるものだ」(衛霊公篇)と言われたが、まさにそうである。

 1992年リオデジャネイロで開かれた地球サミットで気候変動国際枠組み条約が採択された。最高意思決定機関である締約国会議(COP)が95年ベルリンで開催されて以降、新型コロナウイルス禍の20年を除き毎年一回開かれている。97年のCOP3で先進国に温暖化ガスの排出削減を義務づける「京都議定書」が採択され、15年のCOP21では途上国を含む全ての参加国に温暖化ガスの削減努力をもとめる「パリ協定」が採択された。各国がこぞって二酸化炭素の排出をおさえよう、化石燃料の使用をやめようとの流れになっていたが、ロシアのウクライナ侵略戦争、米国のトランプ政権誕生でその流れがゆるくなった。地球温暖化によって干ばつや山火事がしきりに発生し、台風も大型化し豪雨も増えた。パリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える目標であった。24年は1.6度高くなった。25年は戻れないほど上昇してしまったのかもしれない。

 故郷のオホーツク沿岸は、子供の頃、真夏でも焚き火にあたりながら泳ぎ、内地からやってきた人は「天然クーラー」とのたまった。しかし今夏は38度を記録したと言う。冬に訪れる流氷も年々薄くなってると聞く。同窓会での「流氷オンザロック」は伝説になるかもしれない。

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