今月のことば (2007年12月)
子曰わく、参や、吾が道は一以て之を貫く。曹子曰わく、唯。子出ず。門人問うて曰く、何の謂ぞや。曹子曰わく、夫子の道は忠恕のみ。(里仁第四)
應神天皇御陵

あまりにも有名な孔子一貫の道を曽子に説いた所である。一口に貫き通すというが、人間社会にとって之ほど難しいことはない。ともすれば時代の流れ環境の変化によって、節を曲げてしまうものだが、孔子は世に入れられず、十四年間も流浪の旅を余儀なくされつつも、自分の信念たる「忠怒」の道を貫き通した人である。

振り向けば「論語普及会」も二十年の節目を迎えた。そして今その記念すべき年も余す所一月足らずとなった。紆余曲折はあったが、ともかく二十年斯の道を貫き通し得たことは、同慶の至りである。これも支えて下さる道人諸士の熱情の賜と感謝に耐えぬ思いで一杯である。発足当初は世間では「論語ってなに?」と言われるほど関心が薄かったものだった。易では二十年で中変するというが、最近は本屋へ行ってもいろんな論語に関する本が出回り、各地に論語塾や講座・講演が行われるようになった。二十年前には想像もつかぬ現象である。お陰で当会の仮名論語の頒布状況も段々知れ渡って来て注文量も増え、各方面からの問い合わせの頻度も増している。静かな論語ブームの風を確かに感じる昨今である。つまり本会にとって漸く本格的活動期に入ったと見ている。来年は一層足腰を鍛えいかなる変化にも対応して行ける強力な会にしなければと意を新たにしている所である。

九月に退陣され、惜しみて余りある安倍前総理が、短い期間ではあったが、戦後レジームの脱却を唱え、これまで誰もよう手を出さなかった国家の根幹に関わる重要法案を次々と成立させてくれた。中でも一番大きな置き土産はなんと言っても「教育基本法」の改正であった。これにより、道徳教育の再生や漢文教課の復活の提言、武道の正課化、まだわずかではあるが国語時間の増を実現するようになった。これ等は全て我らが待ちに待った具体的な改善策である。この流れは断じて後戻りさせてはならない。誰が首相になろうと国民一丸となって継承させ、より充実発展を計り、危機的国家を再生しなければならない。

−世の中は澄むと濁るの違いにて
    徳ともなれば毒ともなるなり−


の狂歌が言うように、この徳風到来の兆を確り受け止め、当会は来る三十周年に向け「大変」すべき重大な責務を感じている。そのために当初の目標たる「仮名論語」百万部頒布の夢実現に向け、決意を新たにする者である。

−仮名論語百万冊を背に負いて
     喜寿の坂道登りゆくなり−


それと共に、安岡先生の教はなんといっても己自身を内訟し磨き修め一灯となって世を照らす我づくりこそ先決の課題である。新しい年を迎えるに当り、一層の研鑽修学を誓って、静かに年を送りたい。読者の瑞頌を念じつつ。

       冬夜読書   山田 方谷

頽壁雪三尺            「雪の降り積もった
寒空に月一輪           寒空に月が一輪、
堅凝す天地の気         天地の気は読書人の
鐘めて読書の人に在り     全身にみなぎる。」

Copyright:(C) 2012 Rongo-Fukyukai. All Rights Reserved.